こんにちは、らちょです。今回は電磁気学についてです。電磁気の根本的な部分のお話になるので、今回のトピックを理解することで何となくで理解していた公式が説明できるようになると思います。また、受験生の方にとっても電気の分野でこれらの公式は頻出なので、公式の意味を正しく把握することで暗記する内容が減り、問題にも取り掛かりやすくなると思います。それでは本題の方に入っていきましょう!
タイトルにもありますが、皆さんは電位の仕事がW=qVで与えられるのに対し、静電エネルギーがU=QV/2で与えられるという二つの公式を目にしたことがあると思うのですが、エネルギーと仕事は単位がどちらもジュールで一緒で形も似ていますよね。よく見てみると、係数が違ったり、大文字小文字が異なっていたりすることが分かると思うのですが、なぜ係数が違うのか、大文字小文字に意味があるのかどうか、最初は疑問に思うと思います。そもそも静電エネルギーとは何なのか、また電位が行う仕事とはどう違ってくるのか物理的なイメージがつきやすいように解説していきたいと思います。
電位が行う仕事とは?
まずは、電位の行う仕事について解説していきます。電位が行う仕事を理解するにあたって、前提条件として一様な電場中に存在する点電荷を考える必要があります。図としては下図のようなイメージです。

今回、電場の値をE、点電荷のもつ電荷量をqとします。点電荷は微小的なもの(一般的に微小な空間で扱うものは小文字で量を表現することが多い)であるので、小文字のqを一般的に使うのですが、ぶっちゃけ大文字のQでも構いません。今回は、点電荷によるものだということが大事なので、小文字のqで議論を進めます。
一様な電場中に存在する点電荷は電場により力を受けることはご存じクーロンの法則より明らかですよね。力の大きさFは次式で表されます。

次に、点電荷を点Aから距離dにある点Bに移動させます。

この時、電場による仕事Wは

となります。
補足になりますが、ここでの仕事というのはエネルギーの変化を表し、U=mghの位置エネルギーの公式と同じ形を取ります。図の感じも位置エネルギーのものとちょっと似てますよね。
ここで、一様な電場に働く電位を思い出してみましょう。一様な電場中における距離d間の電位は

で表せることができました。電位の求め方は電場の積分で考えられます。詳しい説明は身近な例を使いつつ、こちらのページに載せてありますので、興味のある方はお読みくださいm(__)m
最後にW=qEdの式にV=Edを代入してみましょう。すると、

という式が導けます。これで、一つ目の電位による仕事の意味が分かったと思います。繰り返しになりますが、ここでの電位による仕事というのは一様な電場で点電荷を距離dだけ動かした時のエネルギーの変化であることを覚えておいてください。
また、電位差Vは一定なので、V-q図を描くとその面積が仕事になっているので、上記の公式と一致することが分かります。

静電エネルギーとは?
電位の仕事が理解できたところで、次に静電エネルギーについて考えていきましょう。ここでの静電エネルギーは静電ポテンシャルともいい、全く充電されてないときから充電が完了されるまでのコンデンサに蓄えられるエネルギーの量を表しています。先程の電位による仕事とは考える状況が全然違うことが分かると思います。電位による仕事を考えた際は、一様な電場中での話だったのに、コンデンサの初期状態においては電場は最初は存在していませんよね。電場がなければもちろん電位も0ですし、一体どこから電位が生まれるのでしょうか。
今回、静電容量Cのコンデンサを用意し、電荷量がQになるまで充電する状況を考えていきましょう。電荷量Qは先程の点電荷とは違い、電荷の合計量となっており、大きい空間での議論となるので、大文字で表現しています。コンデンサには徐々に電荷が移動し、充電が進むことは分かっているので、微小な電荷の移動ΔQを導入してコンデンサの充電の過程を追っていきましょう。
最初は充電されていない状態なので、下の極板からΔQだけ上の極板に電荷が移動したとしても電位が存在しない以上電荷を移動させるのに必要な仕事はクーロンの法則より、F=qVとなりますがV=0なので、仕事はもちろん0です。

次にΔQだけ電荷が充電されているとき、電荷を運ぼうとすると、コンデンサの関係式Q=CVから電位が発生してしまうことが分かります。その時のVをV’と定義すると、V’=ΔQ/Cとなり、ΔQだけ電荷を運ぶとその仕事は

で表されます。

微小な電荷量を運ぶのを繰り返していくと極板間の電位差が大きくなり、電荷を運ぶための仕事は大きくなります。やがて電荷量がQに達し、極板間の電位差がV=Q/Cになることで充電が完了します。

さらにΔQの値を小さくしていったときの仕事を縦軸V,横軸をQにとり、柱状グラフにしたものが下図のものであり、柱状グラフの面積の総和が今回求める静電エネルギーと一致します。グラフの柱状図の形はΔQの値を小さくするほど滑らかになり、三角形に近づいてくことが分かると思います。

また、その三角形の面積は静電ポテンシャルと一致し、公式である

が導出することができました!コンデンサにおける議論では、コンデンサ自体が電場を作り出し、その電場は一様でなく、充電が進むにつれて大きくなっていくことが分かりました。これが、電位の仕事と値が異なる理由になります。
V=Q/Cの式からも分かるように電位Vは電荷量Qに比例しています。それをV-Qグラフに表すと、先程のグラフと同じ形を取ることがわかります。そして、その面積はもちろん静電ポテンシャルを表しています。
また、静電ポテンシャルは

と書き換えられることも頭に入れておいてください。
まとめ
これで電位による仕事と静電ポテンシャルのエネルギーの違いが理解できたでしょうか。最後にまとめです。
- どちらもクーロンの法則から考えることができるが、そもそも考えている状況が違う。
- W=qVでは一様な電場での点電荷を一定距離動かした時のエネルギー変化。
- U=QV/2では一定距離の極板間を持つコンデンサの充電過程で生じる電場中(一定ではない)において、極板から極板に電荷を徐々に運ぶ時のエネルギー変化。
- どちらもV-Q図を描いてその面積を考えるとイメージしやすい。
- 点電荷の電荷量は小文字で、コンデンサに貯まる電荷量を大文字で表すことが多いため、公式のような文字を使っている。
今回のお話はどうでしたか?結構ボリュームのある内容でしたが、電磁気を理解する上で公式の意味を正しく理解するのはとても重要です。物理的なイメージを掴むことで自分が何を勉強しているか分かるので、モチベーションの向上にも繋がりますし、勉強の効率も上がると思います。自分は高校生のとき、「物理のエッセンス」という著書を使い、受験勉強を進めたのですが、物理的な意味を図を用いて解説しているので、おすすめの一冊です。自分は大学に入ってもお世話になることもあったので、物理学に興味がある人は一度手を出してみてはいかがでしょうか。何か質問等あればコメントしてください。以上らちょでした、それではまた!
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