こんにちは、ぽたです。今回は最近勉強している粒界についてまとめてみたので、ぜひご覧になってください。
粒界とは
まずは、粒界とは何ぞやということで、僕の言葉で単純に説明すると、
原子が規則正しく並んでない界面
です。wikipedia様の言葉を用いさせていただくと、
多結晶体において二つ以上の小さな結晶の間に存在する界面
出典:wikipedia(結晶粒界)
とのことです。つまり、二つの結晶がいい感じにくっつかなかったらってことかな。図にするとこんな感じです。
また、僕の認識では、粒界=結晶粒界で、サイズ感としては、どんな小さな乱れでも粒界と呼ぶことが出来ます。
粒界ってなんで大事なの?
粒界がなぜ大事かというと、高温超伝導体において流すことのできる最大の電流、臨界電流密度に大きく影響してくるからです。
バイクリスタルという、結晶方位を意図的にずらした実験で、臨界電流が大幅に低下することが確認されています。
なので、物質の能力向上に粒界というのは大きくかかわってくるのです。(つまり配向度をあげたい)
粒界の種類
粒界の種類というのは、傾く方向によって別の界面を作るという話です。具体的には、x軸方向、y軸方向、z軸方向に分かれます。
結晶だと、a軸、b軸、c軸って言ったりしますね。なんでこういう風に言うんでしょうね。
おそらく結晶の形で、x、y方向が垂直じゃなかったりするからですかね。(ぽたの勝手な推論)
とりあえず、結晶の粒界は方向によって3種類に分けられます。要はa、b、c軸のどれがそろっているかという話になります。
この縦の三つです。(図が汚いとか言うな。)
この3つはなんで決めなくてはいけないかというと、正方晶だった場合はあまり意味がないのですが、斜方晶などの非対称だった場合、結合の形が変わってくるからです。
粒界のエネルギー
さっきの図にΘと書いたのですが、それが粒界の角度になります。
その粒界の角度によってエネルギーの計算の仕方が変わります。下のような形にまとめてみました。
何言ってんだというそこのあなた。安心してください、僕も完全にはわかりません。
とりあえず、エネルギーの考え方をする際、
\(\displaystyle \theta < 15\text{°}\) を低角度粒界
それよりも大きな角度を高角度粒界と呼んでいます。(この角度は割と定義が曖昧で、10°としている論文もあります。)(なんならフランクの公式のsinをtanとしているやつもあります。どっちかわかりません。)
低角度粒界について
低角度の粒界では、界面のエネルギーが大事だといわれています。
イメージしてもらえば簡単なのですが、粒界の面と面が近いのが低角度粒界です。
それは、Read-Shockley方程式で近似することが出来ます。
Read-Shockley方程式:\(\displaystyle \gamma_{gb} =\gamma_0(A-ln \theta) ただし(A=1+ln(b/2\pi r_0)) \)
これは界面のエネルギーです。小文字のgbは Grain Boundaryの略で、粒界って意味ですね。γ0はベクトルと弾性係数と幾何学的因子って書いてありました。なんやねんそれ。調べたい方は調べてください。
また、この式は導出ができるのですが、打ち込むのがめんどくさいので、パワポ直貼りで許してください。こんな感じらしいですね。
そんなことは分からなくても取り合えず角度とエネルギーの関係式に収まりました。
高角度粒界について
高角度粒界は、界面と界面が離れているので、エネルギーは大事ではありません。代わりに
どれだけ共通の粒子を持っているか
が大事になってきます。何を言っているのかわからないと思うので、図を持ってきました。論文の図を持ってこさせていただきましたが、違法だったらすぐに教えてください。石田洋一さんの日本語のjstageの論文です。
見てもらえばわかるのですが、図の左の方が隙間がすくなくて、右の方が大きいことがわかります。これをCSL(coincidence site lattice)では、粒をどれだけ共有しているかで判断します。
このように、回転したときにどこに共有できる粒があるかどうかを考えて、エネルギーを考えます。これを式として示したら、
\(\displaystyle \Sigma =| \vec{C_1}・( \vec{C_2}×\vec{C_3} ) |/| \vec{a}・( \vec{b}× \vec{c} )| \)
となるらしいです。Cは始祖ベクトルといって、共有している格子点の密度みたいな値になっています。
一応、対応格子点の密度と結晶格子点の密度の比の逆数がΣになっているとのことですがつまり、
値が小さい方が界面のエネルギーが小さくてきれいにそろっているよりである
ってことです。
高角度粒界はこのような値を用いて考えます。
高温超伝導体における粒界特性
高温超伝導体における粒界特性について簡単にまとめてみましょう。
前提条件として、バイクリスタルっていう方位をずらした結晶の上に超伝導薄膜を作っています。
臨界電流特性
まず、粒界の角度が大きくなるにつれ、超伝導の電流輸送特性が指数関数的に減少します。これは式として表すと、
\(\displaystyle J_c( \theta )=J_c(0) \exp(- \frac{ \theta}{\alpha})\)
となります。(ただし、臨界角を超えた際)
この臨界角は3°ぐらいらしいです。低角度粒界の中でさらに細かい区分があるんですね。
ちなみに臨界角を超えていない際の臨界電流はおおよそ粒内の臨界電流と等しくなります。また、この領域のことをプラトー領域といいます。
また、磁場をかけた際の電流密度は、低磁場領域では粒界に依存しますが、高磁場領域(状況によるが3T以上)では粒子に依存していることが判明しています。(低角度粒界)
粒界の幅
粒界の幅は、粒界の角度によって大きく異なります。
粒界が連続してまっすぐにつながりだすのが8°付近です。それ以下は粒界が断続的になります。
そういった面では低角度粒界はおおよそ10°とかにしておいた方がわかりやすいのかもしれませんね。
また、角度が11→45°になるにつれ、粒界の幅が0.2 →0.9 nm に線形的に増加したとの実験結果もあります。
粒界の幅に関してはこれだけですが、そのままだとバイクリスタルの上に作った粒界だとしてもかなり蛇行してしまいます。
これは明らか結晶方位のせいなんですけど、薄膜の堆積速度を減少させることで、直線的な粒界を作ることに成功しています。
磁場のピン止めと抜け方
まず、粒界がある場合、その付近は超伝導特性が減少します。そうなった場合、磁束フローが生じやすく(ピン止めされている磁束が熱揺らぎによって動くこと)なります。
このように磁場をかけている際はピン止めの中心となることが知られている一方、磁場をかけ、少し置いた後は磁場が粒界に沿って逃げ出すことが知られています。また、入る際も粒界に沿って入ることが知られています。
まとめ
粒界って、特性に大事だねえってことがわかってくださったかと思います。
だからこそ、配向度配向度騒いでるのです。どんなデバイスを作るにしても特性がいい方がいいですからね。
ちなみに、粒界に対して混ぜものを入れたら、特性が改善したなんて事例もあります。皆様もぜひ粒界マスターになってくださいね!
それではまた、ぽたでした。
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